5月はAAPI(Asian American and Pacific Islander) Heritage 月間:「我慢強さ」が裏目に?アメリカの医療現場で求められる自己主張(Self-advocacy)とは
- FLATふらっと

- 5月16日
- 読了時間: 4分

5月はアメリカのAAPI(アジア系・ネイティブハワイアン・太平洋諸島系)遺産月間です。アメリカ社会におけるアジア系の歴史や文化、そして貢献を称える1ヶ月ですが、私たち在米日本人にとっても、アメリカという社会で生きる「自分たちのこと」を見つめ直す大切な機会です。
今回はこのAAPI月間にちなみ、アメリカの複雑な医療現場の中で、私たちアジア系(特に日本人)が直面しやすい「ある落とし穴」と、自分自身を守るためのヒントについてお話ししたいと思います。
🩺医療現場での落とし穴 ——「おとなしい」アジア系文化
日本には、「我慢強さ」「遠慮」「不平を言わない」「お医者様を信頼して任せる」といった、素晴らしい美徳の文化があります。「先生、お忙しそうだからこれ以上質問したら悪いな……」「これくらいの痛みなら、もう少し様子を見よう」と、診察室でつい一歩引いてしまった経験はありませんか?
しかし、ここアメリカの医療現場では、この「おとなしさ」や「我慢強さ」が裏目に出てしまうことがあります。
アメリカは良くも悪くも「主張してはじめて存在が認められる」社会です。患者が静かに、遠慮がちに話すと、ドクターやナースは「そんなに痛がっていない」「緊急性はなさそうだ」「本人が満足して納得している」と誤解してしまうことがあるのです。
📕知っておきたい言葉:「メディカル・ガスライティング」
近年、アメリカの医療界で問題視されている言葉に「メディカル・ガスライティング(Medical Gaslighting)」というものがあります。
これは、患者が訴える辛い症状や痛みが、医師や医療スタッフから軽視されたり、「気のせい」「ただのストレス(精神的なもの)」と片付けられてしまったりする現象を指します。
統計的にも、女性や人種的マイノリティ、そして「自己主張が控えめ」なアジア系は、このメディカル・ガスライティングに遭いやすい(=症状を過小評価されやすい)と言われています。例えばアメリカの救急外来の研究では、同じ激しい腹痛であっても、女性は男性より治療までの待ち時間が30%以上長く、痛み止めを処方される確率も低いという格差が報告されています*。
適切な検査や治療を後回しにされないためには、私たち自身が「自分の健康の代弁者(Advocate)」になる必要があります。
🛡️自分と家族を守るための「Self-advocacy(自己主張)」のコツ
アメリカの病院でちゃんと自分の症状を伝え、対等な医療を受けるために、明日からできる具体的なアクションをいくつかご紹介します。
1. 痛みを「数値」で伝える
「とても痛いです」という表現は主観的で、文化によって受け止め方が異なります。 アメリカの病院でよく使われる「0〜10の10段階(10が人生最大の痛み)」を使って、「今は『7』の痛みです」「朝起きた時は『8』でした」と数字で伝えると、ドクターに深刻さが正確に伝わります。
2. 症状や質問を「メモ」にして持参する
診察室に入ると緊張して英語が出てこなくなったり、ドクターの早口に圧倒されたりするのは当然です。受診前に、以下の内容をスマホや紙に英語で書き出しておき、そのままドクターに見せましょう。
いつから、どこが、どのように痛むか(動悸がする、ズキズキするなど)
今日、一番解決したいこと
ドクターに聞きたい質問(3つ程度に絞る)
3. わからないことは、その場で聞き直す
ドクターの説明や専門用語が分からなかったときは、遠慮せずに聞き直して大丈夫です。
"Could you explain that again in simpler terms?"
(もっと簡単な言葉で、もう一度説明していただけますか?)
"Can I take notes?"
(メモを取ってもいいですか?)
医療通訳(Interpreter)を事前にリクエストするのも立派な権利です。
4. 違和感があれば、セカンドオピニオンを躊躇しない
もし「真剣に話を聞いてもらえなかった」「お腹が痛いのに、ストレスのせいにされた」など、医師の対応に違和感を覚えたら、信頼できる別の医師を探す権利があなたにはあります。自分の体の「おかしい」という直感を信じてください。
💬一人で抱え込まず、「ふらっと」繋がろう
アメリカの医療をサバイブしていくのは、言葉の壁だけでなく、文化の壁もあり、本当にエネルギーがいることです。「あの時、もっとこう言えばよかった」と後から落ち込むこともあるかもしれません。
我慢すること、静かにしていることが正解ではないアメリカだからこそ、私たちはもっと声を上げていっていいのです。
もし、病院での交渉に不安を感じたり、アメリカの医療制度で迷ったりしたときは、一人で抱え込まずに、ぜひ「FLAT・ふらっと」を頼ってください。日本語で安心して経験をシェアし、情報を得られるコミュニティとして、私たちはいつでもここにいます。
このAAPI月間を機に、まずは自分自身と大切な家族の「体と心の声」に耳を傾け、より良い医療を受けられる一歩を踏み出してみませんか?
参考文献
Chen EH, Shofer FS, Dean AJ, Hollander JE, Baxt WG, Robey JL, Sease KL, Mills AM. Gender disparity in analgesic treatment of emergency department patients with acute abdominal pain. Acad Emerg Med. 2008 May;15(5):414-8. doi: 10.1111/j.1553-2712.2008.00100.x. PMID: 18439195.




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