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がん医療を動かすのは、研究者だけではない

執筆者の写真: FLATふらっと
FLATふらっと
9月30日
読了時間: 4分

〜第13回日米オンコロジーカンファレンスに参加して〜



9月4日、ワシントンD.C.の日本大使館旧大使公邸で、第13回日米オンコロジーカンファレンスが開催され、今年も、FLAT・ふらっとは参加してきました。今年のテーマは「Advancing Cancer Innovation Amid Global Challenges」。FLAT・ふらっとアドバイザーのお二人、中川俊一先生が登壇し、白井敬祐先生がモデレーターを務めるなど、それぞれの立場で活躍されました。私たちも応援を兼ねて参加してきました。



このカンファレンスの魅力は、最先端の研究発表を聞けることだけではありません。質疑応答ではかなり率直な質問が飛び交い、講演が終われば登壇者と参加者がそのまま話し込み、最後はレセプションへ。大きな学会とは少し違う、研究者、臨床医、企業、財団、患者アドボケートの距離の近さが印象的でした。ここからは、そんな一日の中で、特に心に残った二つの発表について、少し個人的な感想を書いてみたいと思います。


📖アカデミア発祥のがんに対する光治療

一つは、NCIの小林久隆先生の近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)です。がん細胞の表面に結合する抗体と光に反応する物質を組み合わせ、近赤外光を当てることで標的となるがん細胞を選択的に破壊する治療法です。小林先生の研究室で2011年に開発されたこの技術は、その後企業へライセンスされ、2020年には日本で再発頭頸部がんに対する治療として承認されました。現在も研究はさらに広がっています。

アメリカの研究室で生まれたアイデアが、企業や多くの研究者との連携を経て、日本で実際の患者さんに届く治療になる。 「日米の医療協力」という言葉はよく聞きますが、その言葉が急に具体的なものとして見えた気がしました。基礎研究から患者さんの治療までには、とてつもなく長い道のりがあります。それを実際に歩いてきた研究者の話を目の前で聞けたことは、とても印象に残りました。



🔍患者団体が主導するがん研究

そしてもう一つ、私にとってさらに考えさせられたのが、AIM at MelanomaのPresident、Samantha Guildさんの講演でした。AIM at Melanomaの始まりは、一つの家族の経験でした。Samanthaさんの妹Charlieさんが20代でステージIVメラノーマと診断され、家族は治療法や臨床試験を必死に探しました。しかし当時は、治療の選択肢も患者・家族向けの情報も非常に限られていました。Charlieさんの死後、母Valerieさんは「同じ思いをする家族をなくしたい」と活動を始めました。それが2004年に設立されたAIM at Melanomaです。


自宅のリビングルームから始まった活動は、今では世界規模の財団となり、患者・家族への情報提供だけでなく、研究プロジェクトへの資金提供や運営、政策提言、FDAなどへの患者の声の届け方にまで活動を広げています。現在、AIMは5つの重要な研究プロジェクトを運営・支援しています。そしてSamanthaさんがさらりと話した数字にも驚きました。「先月だけで、日本から1万人以上がAIM at Melanomaのウェブサイトを訪れました」。日本からこれほど多くの人が、アメリカの患者団体の情報を求めているのです。


彼女の講演で繰り返されていたのは、「何をしている団体なのか」だけではなく、“なぜ、それをするのか”を伝えることの大切さでした。数字やデータだけでは人は動かない。患者さんや家族の物語を伝え、「なぜ変える必要があるのか」を共有することで、人がつながり、行動が生まれる。実際、AIMをはじめとする患者団体は、進行メラノーマの新しい治療をめぐり、患者や家族の声を集め、FDAへの書簡や公聴会を通じて届けてきました。今年8月、その治療はFDAの迅速承認を受けています。FDAも、審査にあたって患者アドボケートらの意見を考慮したと発表しています。



患者や家族は、医療を「受ける側」だけではない。必要な情報を求め、声を上げ、研究者を支え、時には研究や制度そのものを動かす側にもなれる。アメリカの患者・家族のそんな力を目の当たりにして、FLAT・ふらっとの活動についても改めて考えさせられました。私たちが届けている情報やサポート、患者さん同士のつながりも、その先には「必要な医療を自分たちでより良くしていく」という可能性があるのかもしれません。


💬 FLAT・ふらっとからのメッセージ

日米オンコロジーカンファレンスは、研究者や専門家だけでなく一般の方にも開かれている会です。最先端のがん研究を知るだけでなく、「医療は誰がつくるものなのか」を考える良い機会にもなりました。次回は、あなたもFLAT・ふらっとの皆さんと一緒に参加してみませんか?

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