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執筆者の写真FLATふらっと

乳がん局所再発リスク




2023年4月

                          

早期乳がんの局所再発率が白人よりアジア系を含むマイノリティで高いことが判明

 米国では乳がん患者の大半を占めるホルモン受容体陽性、HER2陰性、脇の下のリンパ節に転移のない早期乳がん患者について、医療アクセスや治療継続性が同じ条件下でも黒人およびアジア系患者は白人患者に比べて局所領域に再発する確率が2倍近いという研究結果が、米国医師会のJAMA Surgery誌オンライン版4月12日号で発表されました(注1)。

 これは上記にあてはまる早期乳がん患者に対し、術後化学療法の必要性を調べるために行われた大規模なランダム化比較試験「TAILORx」の事後解析からわかったものです。同試験参加者のうち9369人(アジア系4.6%, ヒスパニック 9.4%, 黒人 7.2%, 白人 78.8%)について8年間の再発率を解析した結果、乳房切除手術後の同側乳房や胸壁、皮膚、リンパ節への転移を含む局所領域での再発が、白人患者で1.8%だったのに対し、黒人患者では3.9%、アジア系患者では3.6%、ヒスパニック系患者で3.1%と、非白人患者で高い割合を示していました。

  オンコタイプDX再発スコア検査とは、切除した腫瘍組織から21の遺伝子発現状況を調べて10年間の再発リスクを数値化し、治療選択に役立てるものです。TAILORx試験では術後にオンコタイプDX再発スコアが10以下の低リスク患者にはホルモン療法のみ、中間リスクの11から25までの患者にホルモン療法単独、または化学療法後にホルモン療法、高リスクの26以上の患者には化学療法後にホルモン療法を実施しました。

 今回の事後解析は、この臨床試験に参加した患者の8年間の局所再発率を人種別に詳しく調べたものです。調査対象のほとんど(72.6%)の患者は、上記の治療に加えて放射線療法も受けていました。手術の種類で分類してさらに解析すると、アジア系患者と黒人患者の乳房全摘術後の局所再発率が白人患者の3倍と最も高かったこと、また再発スコアが26以上の患者に限るとアジア系患者の局所再発率が最も高い(アジア系患者10.6%対白人患者3.0%)結果になりました。

 人種以外で局所領域の再発に関連していた要因は、50歳未満という年齢、腫瘍の高悪性度、高リスクの再発スコアでした。ホルモン療法に加え化学療法を受けた人の再発は微減していました。

 

 局所再発で乳がんによる死亡リスクは6倍近く上昇している一方で、白人患者とアジア系や黒人患者など人種の比較では、乳がんによる死亡リスクは変わらないことが解析結果でわかりました。

 

 対象者は臨床試験に参加していたので、人種にかかわらずほとんどが決まった治療を受けていましたが、局所再発率は人種によって異なることが今回の解析で示されました。実社会ではアジア系を含むマイノリティ患者が医療にかかりにくい状況もあります。そうした社会的背景がある中で、局所再発したマイノリティ患者への医療対応が不十分なことが、乳がんによる全般的な人種間での死亡格差を招いているかどうかをさらに研究する必要があると、この解析を行った研究者らは述べています。

翻訳:片瀬ケイ

校正・監修:田原梨絵(FLATJP 臨床アドバイザー  乳腺科医 MD)

参考リンク 

Racial and Ethnic Disparities in Locoregional Recurrence Among Patients With Hormone Receptor–Positive, Node-Negative Breast Cancer: A Post Hoc Analysis of the TAILORx Randomized Clinical Trial | Breast Cancer | JAMA Surgery | JAMA Network

Breast Cancer Recurrence Rates Much Higher in Black, Asian Women (medscape.com)

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