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子宮頸がんに関する情報

                                    2021年8月の情報

子宮頸がんやHPVについて知りたい方、またご自身やご家族が子宮頸がんと診断された方などを対象に当Webページでは医学的に確立した情報を皆様にお届けしています。

 

〈HPVヒトパピローマウイルスについて〉

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんを主に、様々ながんの原因となるウイルスです。子宮頸がんの病理を理解する上で、まず始めに、一般的な性感染症(STI)であるHPV感染症の知識を得ることが重要となります。

 

HPVには200以上の株が存在し、そのうちのいくつかは性的接触によって広がります。そこで、これらはおおまかに2つのカテゴリーに分けられています。

  • 低リスク型  がんの起因となることはほとんどありませんが、性器にいぼなどを発症させるものもあります。

  • 高リスク型  子宮頸がん、頭頸部がん、肛門がんなど、何種類かのがんを引き起こす可能性があります。14種類の高リスク型HPVのうち、HPV16およびHPV18の2種類がHPV関連癌の原因の大半を占めています。

 

HPVは、性的接触のある女性のほぼ全員が生涯で一度は感染するとされる一般的なウイルスであるためHPV感染は稀ではありません。これらの感染の約半数は高リスク型のHPVによるものでありますが、免疫系の対処により、ほとんどの感染は癌にはつながりません。

 

Q: HPVはどのようにして癌を発生させるのでしょうか?

A: 場合によっては免疫系がHPVを撃退できないことがあります。そこで、高リスク型のHPVによる感染が持続すると、細胞内にさまざまな変化が起こり、そのままにしておくと癌に発展する可能性があります。HPVに感染した子宮頸部細胞ががんに進展するまでには、多くは約10~20年(またはそれ以上)かかるといわれています。

 

HPVの持続感染を原因とする子宮頸がんを発症するリスクファクターには、次のようなものがあります。

  • HPVの種類(HPV16やHPV18のような高リスクのタイプによる感染)

  • 免疫力の低下(HIVに感染している方、免疫抑制剤を服用している方など)

  • 他のSTIとの重複感染

  • 喫煙

 

HPVは子宮頸がん以外にも腟がん、外陰がん、陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんなど、さまざまな種類のがんの原因となる可能性があります。

また、HPV感染による子宮頸がんの発症が最も一般的ですが、他にも胎児が合成エストロゲンの一種であるジエチルスチルベストロール(DES)に曝露した場合 (現在はほとんどないが、母親が何らかの原因で摂取した場合)など、HPVが原因でない子宮頸がんも稀に存在します。

 

 

〈子宮頸がんの症状〉

 

自覚症状がないこともありますが、子宮頸がんの兆候として注意すべき症状には、以下のようなものがあります。

  • 性交後や月経の間の異常出血

  • 生理不順

  • 腟分泌物(おりもの)の増加や悪臭

  • 背中の痛み

  • 意図しない体重減少

  • 疲労感

  • 骨の痛み

 

これらの症状は、がん以外の要因で起こることもあるため、婦人科医に診断してもらうことが大切です。自分の体の声に耳を傾け、何が自分にとって「正常」なのかを知っておきましょう。

 

 

〈子宮頸がんについて〉

 

Q: 子宮頸がんとはどんながんですか?

A: 子宮頸がんは、腟と子宮をつなぐ子宮頸部に発生するがんです。主な原因としては、高リスク型HPVの(長期的な)持続感染であり、それによって正常な子宮頸部の細胞が異変し、時間の経過とともにがんに発展します。

 

子宮頸がんには、大きく分けて二種類があります。

 

  • 扁平上皮癌  最も一般的な子宮頸がんで、子宮頸がん全体の約70~80%を占めます。このタイプは、子宮頸部の外子宮口付近の細胞から発生し、頸管内部などへと広がり始めるのが特徴です。

  • 腺癌  2番目に多い種類であり、これらのがんは、内子宮口の粘液を産生する(腺)細胞から発生します。

 

 

〈子宮頸がんの診断法〉

 

Q: 子宮頸がんはどのように診断されるのですか?

A: 子宮頸がんが疑われる場合、医師は子宮頸部の以下のような検査を行います。

 

  • コルポスコピー  特殊な拡大鏡を使って、異常な組織を目視により探し出す検査です。

  • 子宮頸部組織生検  子宮頸部から組織のサンプルを採取し、病理検査を行います。

  • 子宮頸管内掻爬術  スプーン状の器具で子宮頸管の内壁から組織のサンプルを採取し、詳しく調べる検査です。

  • LEEP  細い電気ループを使用して、組織サンプルを採取し、異常の有無を調べます。この処置は通常、局所麻酔下で行われます。

  • 円錐切除(コニゼーション)  子宮頸部の深層にある細胞を採取して検査する方法です。この処置は、病院にて全身麻酔下で行われることもあります。

  • X線検査  がんの転移を判定するために行われる検査です。

  • CT  がんの遠隔転移、リンパ節転移を判定するために行われる検査です。

  • MRI  がん広がりの程度(特に子宮周囲やリンパ節転移の有無)を特定するために用いられる検査です。

 

がんの診断を受け入れるのは決して簡単なことではありませんが、私たちはあなたやご家族をサポートし、これを乗り越えていくためのお手伝いを精一杯いたします。

 

また、精神的ストレスにより感情的になってしまう場合もあるため、診察の際には質問のリストを用意し、メモを取る、あるいは質問やメモ作成を手伝ってくれる方を一緒に連れて行くとよいでしょう。その際、おくすり手帳や自分の医療情報・病歴などもご持参なさるといいでしょう。

 

最後に、主治医からの診断や今後の治療方針にご不満である場合などは違う医師からの診断・意見(セカンドオピニオン)を検討することをわれわれは推奨しております。

 

 

〈子宮頸がんに関する統計・データ〉

 

子宮頸がんは、35~44歳の女性に最も多く発症し、診断される年齢の中央値(メジアン)はおおよそ50歳です。

 

子宮頸がんの5年相対生存率(診断から5年後まで生存できる確率)は約66%ですが、早期に発見されれば、高くなることもあります。子宮頸がんの約44%は初期(ステージI:がんが子宮頸部に限局している状態)で診断されますが、その時の5年相対生存率は約92%です。しかし、がんが近くのリンパ節に転移した状態(ステージ III)の5年相対生存率は58%、遠隔転移した場合は(ステージ IV: がんが転移した状態)18%となっています。

 

米国では

  • 毎年、約14,480人が子宮頸がんと診断されています。

  • 毎年、約4,290人の女性が子宮頸がんで亡くなっています。

  • 現在、293,394人の女性が子宮頸がんを患っています。

  • 子宮頸がんは、新規がん患者全体の0.8%を占めており、他の種類のがんと比べると比較的まれながんではあります。

 

世界的に見れば、子宮頸がんの患者数はさらに多く、2020年には604,127人が新たに診断されたと推定されています。

 

 

〈子宮頸がんのステージとグレード〉

 

医師が子宮頸がんのステージを決定する際、次の3項目を検討します。

 

  1. がんが子宮頸部のどこまで浸潤しているか

  2. がんが子宮頸部以外の組織に浸潤しているか

  3. がんが近くのリンパ節や他の臓器に転移しているか

ステージによるがんの進行状態の評価は、最良の治療方法を決定するために重要なものとなります。

子宮頸がんのステージとグレードの詳細については、米国がん学会の分類表をご参照ください。

※American Cancer Society: Cervical Cancer Stages

https://www.cancer.org/cancer/cervical-cancer/detection-diagnosis-staging/staged.html

※日本産科婦人科学会

【進行期分類】(日産婦 2020,FIGO 2018)

Ⅰ期:癌が子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は 考慮しない)

 ⅠA 期:病理学的にのみ診断できる浸潤癌のうち,間 質浸潤が 5mm 以下のもの 浸潤がみられる部位の表層上皮の基底膜より 計測して 5mm 以下のものとする.脈管(静脈 またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しない.

  ⅠA1 期:間質浸潤の深さが 3mm 以下のもの

  ⅠA2 期:間質浸潤の深さが 3mm をこえるが,5mm 以下のもの

 ⅠB 期:子宮頸部に限局する浸潤癌のうち,浸潤の深 さが 5mm をこえるもの (ⅠA 期をこえるもの)

  ⅠB1 期:腫瘍最大径が 2cm 以下のもの

  ⅠB2 期:腫瘍最大径が 2cm をこえるが,4cm 以下 のもの

  ⅠB3 期:腫瘍最大径が 4cm をこえるもの 

Ⅱ期:癌が子宮頸部をこえて広がっているが,腟壁下1/3 または骨盤壁には達していないもの

 ⅡA 期:腟壁浸潤が腟壁上 2/3 に限局していて,子宮 傍組織浸潤は認められないもの 

  ⅡA1 期:腫瘍最大径が 4cm 以下のもの

  ⅡA2 期:腫瘍最大径が 4cm をこえるもの

 ⅡB 期:子宮傍組織浸潤が認められるが,骨盤壁まで は達しないもの

Ⅲ期:癌浸潤が腟壁下 1/3 まで達するもの,ならびに/あ るいは骨盤壁にまで達するもの,ならびに/あるい は水腎症や無機能腎の原因となっているもの,な らびに/あるいは骨盤リンパ節ならびに/あるいは 傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの 

 ⅢA 期:癌は腟壁下 1/3 に達するが,骨盤壁までは達 していないもの 

 ⅢB 期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているも の,ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機 能腎が認められるもの(癌浸潤以外の原因に よる場合を除く) 

 ⅢC 期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リン パ節に転移が認められるもの(r や p の注釈を つける) 

  ⅢC1 期:骨盤リンパ節にのみ転移が認められるもの 

  ⅢC2 期:傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの

Ⅳ期:癌が膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか,小骨 盤腔をこえて広がるもの

 ⅣA 期:膀胱粘膜または直腸粘膜への浸潤があるもの 

 ⅣB 期:小骨盤腔をこえて広がるもの 

 

〈治療を受ける際に生じる格差〉

 

米国では人種や民族によって大きな医療格差が存在しています。黒人およびヒスパニック系の女性は、他の人種・民族の女性に比べて子宮頸がんの発症率が高く、新規発症者数ではヒスパニック系女性が最も多いのが現状です。また、黒人女性は子宮頸がんによる死亡率が最も高く、白人女性が子宮頸がんで死亡する確率と比べると、80%も高くなっています。

 

このような格差は、子宮頸がん検診へのアクセス、提供されるケアや受けられる治療の違いなどによる様々な要因によって生じます。定期的なスクリーニングを受けることにより、子宮頸部異形成(子宮頸がんの前段階)や早期がんを発見する事ができるため、定期的な子宮頸がん検診は不可欠であり、それに加え、HPVワクチンの必要性を理解することも重要となります。

 

 

〈治療法〉

 

子宮頸がんが早期に発見された場合、選択肢の一つとして手術があります。早期がんの中には、コニゼーション(子宮腟部円錐切除術)で治療できるものもありますし、中には妊孕性温存可能な手術(赤ちゃんを産む能力を維持するための保存的治療)もあります。

 

病変が子宮頸部に限局して患者さんでは、子宮摘出術が行われることがあります。これは子宮と子宮頸部を摘出する手術のことですが、がんが広範囲となっている場合には子宮頸部に隣接する組織やリンパ節なども摘出することがあります。これには腫瘍の大きさや発生位置など、さまざまな要因によって異なります。また、条件によってはロボット支援下や腹腔鏡下による低侵襲手術も可能となります。

 

手術のほか、子宮頸がんの治療には以下のようなものがあり、病期や再発リスクによって組み合わせた治療が行われます。

 

  • 化学療法  抗がん剤を静脈注射し、全身に巡らせ、がん細胞を死滅させる方法です。化学療法は何回かに分けて行われるため、サイクル性により副作用から回復するための期間を確保することができます。

  • 放射線療法  外部照射療法では、体の外から高用量X線を照射し、がんを狙い撃ちします。この治療法は通常、化学療法と組み合わせて行われます。

  • ブラキセラピー(小線源療法)  放射線療法の一種でありますが、外部照射ではなく、子宮頸に放射装置を入れ、体内からがん組織に放射してがん細胞を死滅させます。

  • 免疫療法  免疫系を刺激または抑制することによって、免疫システムががん細胞を攻撃する力を高める治療法です。

 

子宮頸がんの治療の中には、生殖機能に影響を与えるものもありますが、妊孕性温存可能な治療法も存在します。あなたにとって最善な選択肢を医師とよくご相談ください。

 

子宮頸がんの治療法は研究の成果により日々新しくなっています。そのため、子宮頸がんの種類やステージ、グレードによってどの治療法が最適なのか、医師とご相談いただくのが重要となります。治療に対する不安、医師の決断した治療法にご不満がある方や難しいご決断を下されなければならない場合などは、われわれのヘルプラインをいつでもご利用ください。

 

 

〈子宮頸がん検診と予防法〉

 

子宮頸がんには、HPV感染の予防やがん前段階での発見など、いくつかの手段によって発症しにくくする予防法がいくつか存在します。

 

  • HPVワクチン

 

HPVワクチンは、HPVによるがんの原因となる高リスク型に加え、性器に発生するいぼの原因の大半を占める型(低リスク型)などを含む複数のHPVからの感染を防ぐことができます。米国ではワクチンは、男女とも9~12歳の間に接種するのが最も効果的で推奨されており、45歳までが接種対象となります。ですが、27歳~45歳の方は、接種することが有益かどうかを主治医とご相談ください。9種類のHPVに対する予防効果を発揮するHPVワクチンの接種により、HPVを原因とする子宮頸がんを最大90%予防できると推定されています。日本では2種類のHPVを含む2価HPVワクチンまたは、4種類のHPVを含む4価HPVワクチンが公費接種対象となっています。(2022年9月末現在)

 

2006年にHPVワクチンが米国で承認されて以来、子宮頸がんの症例は減少傾向にあります。ただ、検診ガイドラインのない他のHPV関連がんの割合は、同時期に増加している現状です。ですので、がん予防、そして早期発見には、ワクチン接種に加え、定期的な検診が要となってきます。

 

  • パップテスト(子宮頸がん細胞診)

 

パップテスト(またはパップスメア)は、柔らかいブラシを用い、子宮頸部から細胞を採取したのち、顕微鏡下で観察され、病理診断をする子宮頸がんのスクリーニングに最もよく使用される検査方法です。米国では3年に一度、日本では2年に一度が推奨されています。

 

  • HPV検査

 

HPV検査は、異常細胞発現の原因となる高リスク型HPVに子宮頸部が感染しているかどうかを検出するために行われます。パップテストと同様、子宮頸部から細胞を採取し、結果はHPVの陽性または陰性のどちらかで返ってきます。

 

子宮頸がんの検診ガイドライン(U.S. Preventive Services TASK FORCE)

https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/cervical-cancer-screening

 

  • 21~29歳    一般的には21歳からパップテストを行い、結果が正常である場合には3年ごとの定期的な検査が推奨されています。

  • 30歳~65歳   どの検査法が最適か医師とご相談なさるのを推奨します。しかし、以下のガイドラインが一般的となっています。

    • 3年に一度のパップテスト

    • 5年に1回のHPV検査

    • 5年に1度のHPV検査とパップテストの併用

  • 65歳以上  20年以上検査結果が正常である方、子宮頸部を摘出なされた方などは、検査を受ける必要がない場合があります。ただし、子宮頸がん検診の必要性については、必ず医師とご相談ください。

 

日本の子宮頸がん検診 (有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン)

https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0729/index.html

日本では以下の2つが推奨されている。

  【細胞診(パップテスト)単独】

  ・20-69歳

  ・検診間隔は2年

  【HPV検査単独法】

  ・30-60歳

  ・検診間隔は5年

 

 

〈治験に関する情報〉

 

子宮頸がんには、手術や化学療法、放射線療法などが一般的な治療法となっていますが、新たな治療法が誕生した場合、治験を通じてその効果が検証されます。

 

治験とは、がんやその他の病気の患者さんを対象に、最新の医学的アプローチがどの程度有効であるかを検証する研究です。これは早期がんや進行がん、再発を経験した患者さんなど、病気のあらゆる段階にある患者さんにとって希望の持てる選択肢となります。

 

治験についてご興味のある方は、「SHARE臨床試験ナビゲーションサービス」をご覧ください。

 

 

〈子宮頸がんのリスクファクター〉

 

HPVは子宮頸がんを発症する最大のリスクファクター(危険因子)でありますが、その他にも以下のようなものがあります。

 

  • 喫煙

  • 経口避妊薬・低用量ピルの服用

  • 免疫系の衰弱

  • 複数回の出産経験

  • HPVワクチンの未接種

  • パップテストに異常歴がある方

  • 定期的なパップテストを受けていない方

 

ですが、これらのリスクファクターのいくつかに当てはまるからといって、あなたが子宮頸がんになることを意味するわけではありません。最も重要なことは、検診ガイドラインを忠実に守り、異常な結果やその他の心配事については医療従事者にフォローアップを行うことです。

 

翻訳:涌井敦和

校正・監修:鈴木幸雄(コロンビア大学メディカルセンター産婦人科 婦人科腫瘍部門 博士研究員)

 

〈引用文献〉

 https://www.sharecancersupport.org/cervical-cancer/about-cervical-cancer/

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